判例紹介┃勤務地限定社員が勤務する事業所が閉鎖した場合

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判例紹介┃勤務地限定社員が勤務する事業所が閉鎖した場合

最近、多様な働き方、多様な社員といった言葉をよく耳にします。

そうした働き方の導入を考える中で「勤務地を限定して採用」される場合があります。

しかし、「勤務地を限定して採用」した場合にその事業所そのものが無くたってしまったら、事業主としては、どのような対応をとる必要があるでしょうか。

「シンガポール・デベロップメント銀行(本訴)事件(大阪地裁 平成12年 6月23日判決)」という事件を見ていきます。

■事件の概要
・会社側:被告
・労働者側:原告

○被告について
・シンガポール共和国に本店を置く銀行
・日本国内には「東京」「大阪」に支店がある
○大阪支店の業績悪化による閉鎖が決定
・特別退職加算金の支払いを提示
・転職斡旋会社のサービスを提供する
等の方針を示しました。

○原告らの要求
・東京支店への配転等を求めて交渉
・転勤を希望する者には、赴任のための費用、帰省費用の負担を求めた
・東京における住居について借上げ社宅の準備を要求
・赴任後二年間は敷金礼金を含め家賃全額を被告負担するよう要求
・三年目以降は、更新料全額、家賃の九割を被告負担とすることを要求
・退職を希望する者には、通常退職金に加えて、年収の四年分を要求

○被告の対応
・通常退職金を五割増
・さらに追加退職金を六か月分上乗せする(合計一二か月分)
等を提案を提案。

しかし、原告らの東京支店への配転等については応じませんでした。

その後、原告らは解雇され、その解雇の効力が争われた事件です。

■裁判所の判断
○いわゆる整理解雇が有効であるための要件
・人員整理が必要であること
・解雇回避の努力がされたこと
・被解雇者の選定が合理的であること
・解雇の手続が妥当であること
以上の四要件が必要とされています。

○被告(会社)の状況
・バブル崩壊後不況が長引いている
・金融機関の破綻もあり、関西では、その経済基盤の弱体化が指摘されている
・アジア諸国においても経済危機があったこと
・これらから企業の資金需要が落ち込んでいることは容易に推認できる

以上のことから、大阪支店の閉鎖は、その収支状況の現状を踏まえ、業績改善の見通しがないことから行われたものと裁判所は判断しました。

また、大阪支店の閉鎖により、その従業員の人数分が余剰人員となったということができるから、人員整理の必要性が生じたことはこれを認めることができる、とも述べています。
東京支店においても業績は良いとは言えず、規模も減少傾向だったため、東京支店への転勤は空きがなく無理であると告げ、東京支店への転勤を一貫して拒否しました。
被告は、
・被告負担による転職斡旋会社のサービス提供を含む希望退職パッケージを提案
・退職金を五割増
・基本給及び職務手当ての各一二か月分を支給する

以上のような対応により、組合の提案に譲歩する等してきました。

これらを総合考慮すれば、被告が解雇回避努力を欠いたということはできない状況でした。

裁判所は以上のように「整理解雇は妥当」と判断しました。

無暗に解雇をすることや安易な解雇は許されるものではありません。

しかし、今回の事例では、支店の閉鎖がやむを得なかったことや、会社側が労働者側に譲歩する姿勢を示していたこと等、会社としてできる限りの対応をしたことがこうした判断に繋がりました。

解雇は、労働者の生活を脅かすことですから、最大限の配慮と回避する努力が必要であると考えられます。

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