事例紹介┃みなし残業(固定残業)制度の導入

事例紹介┃みなし残業(固定残業)制度の導入

20180807

一定時間分の時間外労働に対する割増賃金(残業代)をあらかじめ固定給として支払う「みなし残業(固定残業)制」については、複数の裁判例があります。

また、次のような通達も出されています。

<「時間外労働等に対する割増賃金の解釈について」を前提にした通達>

制度を正しく理解し、運用をしないとトラブルの原因となり「割増賃金の未払い」と言われるリスクもあります。

■日本ケミカル事件
【雇用契約の内容】
この事例で労働者は、薬剤師として勤務していました。

雇用契約書では賃金について
「月額562、500円(残業手当含む)」
「給与明細書表示(月額給与461、500円 業務手当101、000円)」
と記載されていました。

また、採用時の条件確認書には、
「月額給与 461、500」
「業務手当 101、000 みなし時間外手当」
「時間外勤務手当の取り扱い年収に見込み残業代を含む」
「時間外手当は、みなし残業時間を超えた場合はこの限りではない」
と記載されていました。

採用時の条件(求人票等)と実際の雇用契約について、若干の差があることについては、労使間で合意がとれれば大きな問題にはならないでしょう。

【賃金規程の規定】
賃金規程には、「業務手当は、一賃金支払い期において時間外労働があったものとみなして、時間手当の代わりとして支給する。」との記載がありました。

また、事業主と各従業員との間で作成された確認書には、「業務手当は、固定時間外労働賃金(時間外労働30時間分)として毎月支給します。一賃金計算期間における時間外労働がその時間に満たない場合であっても全額支給します。」等の記載もありました。

こうした経緯の中で労働者側は、「時間外労働に対する割増賃金が支払われていない」と訴えた事件です。

■原審(高等裁判所)の判断
「業務手当が何時間分の時間外手当に当たるのかが被上告人に伝えられておらず」
「休憩時間中の労働時間を管理し、調査する仕組みがない」
「労働者本人が時間外労働の合計時間を測定することができない」

このような事情があり、
「業務手当を上回る時間外手当が発生しているか否か労働者が認識できない」ため、
「業務手当の支払を法定の時間外手当の全部又は一部の支払とみなすことはできない」

と判断しましが、最高裁判所はこの判断を破棄し、次のように判決を出しました。

■最高裁の判断
「労働基準法第37条では、同条等に定められた方法により算定された額を下回らない額の割増賃金を支払うことを義務付けている」だけである。

「みなし残業(固定残業)制度そのものは、直ちに違法とはならない」

と述べて<みなし残業(固定残業)制度>が有効になるためには、
○雇用契約書等の記載内容
○使用者の労働者に対するみなし残業手当や割増賃金に関する説明
○労働者の実際の労働時間等の勤務状況

これらを具体的に事例ごとに考慮して判断するべきとしました。

この判断基準に当てはめると今回の事例では、
○賃金規程に業務手当が時間外労働に対する対価として支払われる旨が記載されていた
○各従業員との間で作成された確認書にも、業務手当が時間外労働に対する対価として支払われる旨が記載されていた
○実際の時間外労働と大きくかい離するものではない
裁判所は以上のように判断しました。

この事例の中の<みなし残業(固定残業)制度>については「有効」と判断されたものと考えられます。

<みなし残業(固定残業)制度>について争いにならないようにするためには、「就業規則」「雇用契約書」「賃金台帳・給与明細」等で金額と時間数を可能な限り明確にし、労働者との間に誤解を生じさせないことが重要です。

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